博多湾の潮流変化に影響を及ぼした沿岸開発と海面上昇
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,高度経済高長期に海面の埋立てや海底浚渫により,自然海浜や干潟を失った沿岸海域について,潮汐に与えた影響を分析した。加えて,人類の活動によって排出された温室効果ガスによる地球温暖化という全地球的な気候変動に伴った海面上昇が,湾内の流動変化や物質交換機能の低下をもたらすものという考えから潮流変化の推定をおこなったものである。研究対象海域は,北部九州に位置する博多湾を選定し,湾内の開発が与える潮汐現象の変化と海面上昇による潮流速度の低下を予測したものである。沿岸開発によって,湾奥の潮差は約3cm縮小し,潮流速度は,6〜7cm/sec低下すると予測した。さらに,平均海面の上昇約40cmによる流速の低下は,3〜4cm/secとなり,合わせて9〜11cm/secの低下となった。したがって,今世紀末の湾奥の潮流速度は,沿岸開発や海面上昇の影響を受けていなかった1900年初頭の流速15〜20cm/secが7〜8cm/secにまで減速し,約50%以下に低下するという予測結果を得た。