医師・患者関係における理想と現実のギャップが患者満足度に与える効果 : 医療消費者を対象とした共分散構造分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現代は医師・患者関係の変革のときであり,従来のパターナリステックな対応から,患者中心の医療への転換が求められている。そのためには,医師からの情報提供が十分になされ,インフォームド・コンセントやインフォームド・チョイスが患者に対し十分に保障される必要がある。そこで,本研究では,医師・患者関係に焦点を当て,インフォームド・コンセントとインフォームド・チョイスにおける意思決定および医師からの情報提供,それぞれにおける患者からみた理想と現実のギャップの拡大が患者満足度を低下させるという仮説を立て,医療消費者を対象としたデータを用い,この仮説の検証を行った。本研究では,共分散構造分析を用い,潜在変数として「情報提供ギャップ」と「意思決定ギャップ」の2つを設定し,患者満足度に与える効果はどちらが大きいのかの検証も行った。分析の結果,「情報提供ギャップ」から「患者満足度」へのパス係数と「意思決定ギャップ」から「患者満足度」へのパス係数はいずれも有意に負であった。それゆえ,情報提供における理想と現実のギャップが開く場合と意思決定における理想と現実のギャップが開く場合のいずれにおいても患者満足度は低下するといえる。患者満足度に与える効果の情報提供ギャップと意思決定ギャップの相対比較では,前者のほうが効果は大きいという結果が得られた。ギャップの原因は,患者が医師からの情報提供が不十分であると感じていることおよびインフォームド・コンセントとインフォームド・チョイスにおける意思決定が患者主導でないことにあるため、ギャップを縮小し,患者満足度を高めるためには,医師がより十分な情報提供をおこなうことおよびインフォームド・コンセントとインフォームド・チョイスにおける意思決定をより患者主導にする必要がある。
- 2009-03-31
著者
関連論文
- 医師・患者関係における理想と現実のギャップが患者満足度に与える効果 : 医療消費者を対象とした共分散構造分析
- 医療サービス活動における産業・雇用連関分析の展開 (特集 雇用と産業を生み出す社会保障)
- 川口章著, 『ジェンダー経済格差』, 勁草書房, 2008年