福祉実習教育と「学校から職業への移行」をめぐる問題 : 社会福祉援助技術現場実習指導を手がかりに(産業社会学部)
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概要
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若者の「学校から職業への移行」が困難を極めるなか,教育がいかに職業へ学生を橋渡しできるのかが問われている。福祉の分野では,学校で福祉を学び福祉の現場で働くと構造化されやすいため,「学校から職業への移行」が比較的スムーズに行われるように見える。だが,福祉の労働環境は厳しく,学生の福祉離れに歯止めが効かないこととあいまって,決まりきったパターンでは必ずしも説明できるとは限らない。学生が職業へスムーズに移行するには,自分の将来像を描き,それに必要な能力を獲得できるように「教育の職業的意義」を高める必要がある。本稿では,社会福祉援助技術現場実習指導を手がかりに,その位置づけを明確にすることが,「教育の職業的意義」を高め,「学校から職業への移行」を橋渡しする礎になることを示す。まず,実習指導の対象者と目標を設定して,実習教育の方向性を打ち出さなければならない。そして,福祉という枠だけに囚われず,学生の職業意識・能力の涵養を視野に入れた実習教育を展開していく。そのさい,学生の「主体性」と「自己責任」とのバランスを図りながら,実習教育とキャリア教育との接合点を見出し,実践に移していく視点の導入が重要な役割を果たす。こうして,「教育の職業的意義」を高める素地を培うことで,学生の「学校から職業への移行」を促す展望が開けてくる。