日本と中国の大学教養英語教育の比較
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概要
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近年、グローバラゼイションの著しい展開を背景に、日本政府は大学生の英語熟練度アップの必要性を自覚するようになった。そのような状況の下に、多くの英語研究者も、とりわけ、近隣の中国や韓国における英語教育に強い関心を向けている。それは、両国における英語教育が同じアジアにある日本に比べて、はるかに高い成果を上げているからである。英語達成度を国際的に比較するために、共通データとしてよく使われるTOEFLの点数から見ると、アジアで英語を外国語として学ぶ中国、韓国、日本の三つの国において、日本の得点は下位であった。また、1989年から1998年までの間に、日本人大学生のTOEFLの点数が13点しか上がらなかったのに対して、中国の大学生は51点も成績を伸ばした。中国の特別な教育制度とその高い成果について、日本の言語研究者による紹介論文はすでに数多く公表されている。しかし、実際に日中両国の大学で英語教育に携わった経験を持つ研究者による比較分析は、まだ行われていない。日本の大学生に対し、どのようにすれぼ、もっと積極的に英語を学び、その達成度を高まるようになるのか、そして日中両国の大学生の英語達成度の違いは、一体何がその根本的な原因であるのか、また、中国の大学生の高いパフォーマンスからどのようなヒントを得ることができるのかPそれに中国の社会的・文化的なバックグラウンド、及びそれらの影響はどういったものなのか?それから日本の英語教育の問題点はどこにあるのかなどのことについて、私は中国と日本の大学での自分の英語教育経験をもとに、共通の問題意識を持つ二人の日本人研究者と共に、日中両国の大学英語教育について、国際比較調査を行ってきた。2005年から2006年の二年間、科研費のサポートによって、私たちは中国の上海地区にある多数の大学で教養英語と専門英語について調査し、それらの大学の英語教師と学生にインタビューを行い、さらに教育制度、カリキュラム、教材および設備などについてもリサーチを実施した。本論文は、以上の国際的なリサーチとデータを基礎にし、いかなる理由で日中両国において大学生の英語のパフォーマンスに差が生じたのかに焦点を当て、この差が、両国の異なる教育制度、カリキュラム設計、学生のモチベーション、英語教員の資質、さらに政府の関与などとどのようにリンクしていることかを明らかにしようとしたものである。具体的にいえば、第一部では、主に日中両国で行われたアンケートやTOEFLテスト、中国の大学で教師や学生にインタビューして得たデータなどを用いて、両国の大学生が英語学習に費やす時間、自信度や満足度の相違、TOEFLテストの結果などから、両国の学生が大学入学から一年間の学習を通してどれくらい進歩したかについて比較する。第二部では、日中両国の大学英語教育制度の相違について、カリキュラムの設定、教科書の特徴、教員の教育環境、授業の進め方などについて論ずる。そして第三部では、中国の大学英語教育、特にTOEFLテストのスコアが高い理由が社会的、文化的な背景にあることを明らかにしたい。
著者
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