第一言語と第二言語における正書法深度の相違が第二言語としての日本語の単語認知と文章理解に及ぼす影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
世界の文字体系は表音文字と表語文字に大別できる。文字と音の対応関係の規則性の程度は正書法深度と呼ばれ、表音文字のように、書記素・音素対応規則に基づく文字は「正書法深度が浅い」、表語文字のように、文字と音との結びつきの規則性が弱い文字は「正書法深度が深い」と称される。正書法深度は、第一言語(L1)の単語認知処理の方略を方向付け、第二言語(L2)にも転移することが、先行研究により示唆されており、例えば、中国語をL1とする日本語学習者(中国語L1学習者)と英語をL1とする日本語学習者(英語L1学習者)とでは、異なる処理方略を用いて、日本語を認知している可能性が示されている。しかし、先行研究はL2の言語習熟度を考慮していないため、L2の認知方略が言語習熟度と共に、どのように変容するのか、不明である。また、L1話者の認知処理を実証していないため、L2学習者の認知方略に関する実験結果を正しく評価することが難しい。そこで、本研究ではKoda(1987)に倣い、文章理解の実験を行い、日本語母語話者、上級レベルの中国語L1学習者、および上級レベルの英語L1学習者の日本語の認知方略を比較した。その結果、3グループ間で顕著な相違は認められなかった。この結果から、L2の認知方略は必ずしもL1からの転移によるとは言えず、L2習得過程において、より適した方略が獲得されていく可能性が示唆された。
- 国際基督教大学の論文