複合辞「〜について」「〜に関して」の使用の傾向 : 述定と装定との関係を中心に
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概要
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「〜について」と「〜に関して」は(A)動詞や形容詞に係る述定の用法のほかに,(B)装定の用法「〜についての<名詞>」「〜に関する<名詞>」と,(C)係助詞等で主題化する述定の用法「〜については」「〜に関しては」とがあり,本稿ではそれらの用法が相互にどのような関係を持つか,また「〜について」「〜に関して」の使用状況が装定と述定とでどう違うかを考察した。CD-ROM版「新潮文庫の100冊」を対象にした調査から,「〜について」はAに多く用いられ,「〜に関して」はBに多く用いられることが分かった。そして「〜について」と「〜に関して」はCでは大きな差は出なかった。また,Bの装定の形をAの述定の形に変換してみると非常に不自然な文になってしまう場合が多いが,Cの述定の形にすると自然な文になる場合が多い。これはBの装定の用法はAの述定に対応した表現であるというより,Cの述定のに対応した用法が多いからではないだろうか。以上の考察から,「〜に関して」は主題化された「〜に関しては」というで用法で使われやすく,「〜について」は主題化されていない述定で使われやすいのではないかと考えられるが,その詳細は今後の更なる研究に俟たなければならない。