アメリカの医療扶助改革と民間医療保険(<特集>アメリカ・モデルの福祉国家)
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概要
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アメリカでは,国民一般を対象とする公的医療保険〔社会保険〕は存在しない.非高齢者の多くは就労を通じて民間医療保険〔雇用主提供医療保険〕に加入し,貧困者は医療扶助を受けている.しかし,低所得であっても貧困ではないために医療扶助の受給資格が得られず,他方で保険料の負担が大きいために民間医療保険にも加入できない無保険者が多数存在している.連邦政府は,無保険者問題に対処するために1980年代と90年代に医療扶助の改革〔とくに1997年における州児童医療保険プログラムの創設〕を行った.それは,たんに公的扶助を拡充するだけではない.民間保険を活用して無保険者に医療保険を提供し,雇用主提供医療保険に対する保険料助成を行って民間医療保険の加入を促進しているのである.このことは,アメリカ型医療保険制度の特徴をもっともよくあらわしており,民間メカニズムをできるだけ活用するというアメリカ型福祉国家の特徴を端的に示すものである.