比較福祉国家研究を超えて : アメリカ福祉国家の位置づけ(<特集>アメリカ・モデルの福祉国家)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,福祉国家に共通する再編圧力の本質を,アメリカ企業年金の変化の中に見極める試みである.アメリカ企業年金の多くは,雇用主による労働市場の分断を補強する私的な労務管理手段として,特定の経済・社会的構造を前提に普及した.それが持つ私的な性質は,制度のダイナミズムの源泉として各国の福祉国家的諸制度にも共有されている.それゆえ企業年金は,今日各国が共通して直面している福祉国家の再編圧力の本質をより純粋に体現する震度計となりうる.比較福祉国家研究は,福祉国家の多様性を強調する一方で,各国制度の共有する私的性質を逆説的に浮き彫りした.しかし,比較研究の枠組みでは,こうした知見は福祉国家の動態の解明に十分に活用されなかった.本稿は,彼らの死角を補う手段としてアメリカ企業年金研究を位置づけ,そこで発生した変化を経済構造の変化,および所有権概念の発達に伴う「分断原理」の解体と構築という枠組みにおいて整理する.最後に,この変化が世界の福祉国家再編において持つ意味が示唆される.
著者
関連論文
- 比較福祉国家研究を超えて : アメリカ福祉国家の位置づけ(アメリカ・モデルの福祉国家)
- 確定拠出型年金に関する政策的争点の分析 : アメリカの「投資教育」と「投資アドバイス」をめぐる議論を中心に
- 社会保障再編の新局面 : 2004年の年金改革過程の分析
- 戦後アメリカ企業年金の起点-「デトロイト協約モデル」の企業年金-
- 戦後アメリカ企業年金の発展-「繰延賃金説モデル」の年金プランと「年金保護」-