保育内容に関する研究(I) : 平成元年版幼稚園教育要領改訂に焦点を当てて
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概要
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平成元年の幼稚園教育要領の改訂がもたらした「保育内容」「領域」の考え方と教師の指導性についての幼稚園現場における混乱を,当時岡山市の公立幼稚園で働いていた保育者の回想・エピソードをもとに考察した。この改訂は,それまでの教育の偏重(教師主導の画一的な教育)からの脱皮を意図し,社会の変化に適切に対応できる子どもを育てる教育を,子どもの発達から考えるという趣旨であった。幼稚園教育の保育内容は,昭和31年に6領域(健康・社会・自然・言語・音楽リズム・絵画製作)とされ,昭和39年の改訂を経て,平成元年に幼児の発達の側面からまとめた5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)に編成され,「ねらい」と「内容」で表された。「保育内容」,「領域」の考え方や指導の方法は伝達講習会によって広められたが,「ねらい」と「内容」の関係を明確化することと教師の役割については,かなりの困難と混乱を生じた。その原因や解決策について分析し,伝達講習会のあり方とともに「保育内容」を理解し実践するにあたって保育者に求められる資質についても提言した。