中国・内モンゴルにおける私営企業の労働市場 -フフホト市3社の事例分析-
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概要
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本論文は, 中国・内モンゴル自治区の私営企業を事例とし, 個別企業の労働市場の分析を通して, 現代中国の私営企業労働市場の現状と問題点の一端を解明している。 中国では公有企業の整理縮小による余剰労働力の増加や潜在的な農村過剰人口, それに新規学卒者の参入によって, 労働者の過剰供給が続いており, 都市部の私営企業が雇用吸収の担い手と期待されるところである。内モンゴル自治区の調査企業の事例をみても, 私営企業の労働市場が形成されつつあることは疑いない。自治区内外からの農民工の都市への流入,元国有企業労働者の私営企業へのシフトなど, 相当の労働力移動が生起しており, 市場が広域化しつつある。しかし, 私営企業が新興の労働市場として, 安定的で持続的な就労を提供しているわけではない。調査企業をみるがぎり, 企業規模の大小によらず, 多層化した入職口による労働者の学歴階層性と中国独自の戸籍制度が相互に作用し, 企業内労働市場が分節化している。賃金や就労の安定度等で職層間に格差が顕在化しており, 市場の組織性・開放性や職業選択の自由度などの面でも職層間に質的な相違が見られる。
- 2009-06-11