経済学と生物学の境界で : Lotka-Volterra モデルによるネットワーク競争へのアプローチ
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
経済学は物理学、数学、化学などの方法論を借用するなど、これまでも自然科学との交流のもとに発達してきた。たとえば、一般均衡理論における均衡概念はニュートン力学の均衡概念そのものであり、ワルラス法則はエネルギー保存則に他ならない。そして、今また既存の経済学に再考を迫っているネットワーク競争の問題を扱う上で、一つの自然科学分野の方法論が有効と思われる。経済学が注目するネットワークは、参加者が多いほどネットワークの価値が高まるというネットワーク効果によって特徴づけられる。通信サービス、ファッション性の消費、産業における技術標準、システムの方式などに見られるこの特徴は、伝統的な市場競争の優位性に関する理論を覆す。すなわち、競争市場は必ずしも適者の生存を許さず、競争を制した企業や製品が社会的な優位性を持つとは限らない。本論文の目的は、こうしたネットワーク競争の分析において、20世紀の初頭以来、種の相互連関と個体数の変化を分析してきた生物学におけるLotka-Volterraモデルが有効であることを示すことである。論文では、自ら設備を設置してその上でサービスを提供する設備事業者と、他者の設備を借用してサービスを提供する接続業者との競争について、宿主と寄生者との関係を分析するLotaka-Volterra モデルを援用し、宿主が寄生者を駆逐する長期均衡と、両者が共存する長期均衡とがどのような条件によって分かれるかを明らかにしつつ、政策介入の帰結についても分析する。
- 放送大学の論文
著者
関連論文
- 被災者生活再建支援法と住宅問題
- NOとVNO : 干渉・競争・成長
- 経済学と生物学の境界で : Lotka-Volterra モデルによるネットワーク競争へのアプローチ
- 政治,経済,社会,文化面からディジタル大陸は猿の惑星?
- Bruno S. Frey and Alois Stutzer, Happiness and Economics: How the Economy and Institutions Affect Human Well-Being, Princeton University Press, 2002