社会契約と主権(1) : 憲法制定権力論の視点からみたシェイエス理論とルソー理論の位相
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概要
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憲法制定権力は国家の諸権力を形成する始源的な権力である。フランス革命前夜の1789年、E.シェイエス(E.Sieyes)はこのような憲法制定権力論を体系化し、この始源的な権力が国民に帰属することを主張した。シェイエスの憲法制定権力論はこのように憲法による統治の理論と国民主権の理論とをいわば結合することによってフランス革命期の嚮導的理論としての地位を占めると同時に、現代憲法学においても基本法としての憲法をどのように位置づけ理解するかという問題や主権の本質論、憲法改正の限界論などの憲法学の基礎的諸分野の研究に大きな影響力を持ちつづけている。本稿においては、このようなシェイエスの憲法制定権力論を生み出した社会形成の理論に遡り、シェイエスの社会形成理論とその対立軸であったルソーの社会契約論との相違点を摘示して、そこから主権の法的表象としてのシェイエスの憲法制定権力論の意義を再考するともに、その現代的な課題を再検討したい。