中国語初級学習における問題点
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概要
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実践女子大学で中国語を教える機会を与えていただき,以来二十年近い月日が経過した。この間にも語学学習をめぐる環境は大きく変わり,テキスト一つとっても,数限りなく出版されるものの中からどれを選んで使うか,途方に暮れてしまうほどである。学校で学ぶ外国語としては,英語や他の諸言語に比べかなり立ち後れていた中国語の学習環境はその変化が特に著しく,現在の多量な教科書,副読本,音声教材,学習用ビデオ,DVDなどを目の当りにすると,十年前,二十年前と比べ隔世の感がある。また,学生の質,学習の場の雰囲気も大きく様変わりした。しかし毎年新入生を迎え,入門から初級,そして中級にかかる,いわゆる「基礎中国語」の課程を教えてみると,教師として直面する問題は,基本的には十年前,二十年前と比べてあまり変わっていない事に気づく。その当時に教える側,教わる側が困難と感じていた点は今も依然としてなかなか解決出来ずに存在している。おそらくはこの辺りにこそ,中国語学習,そして中国語の難しさがあるのであろう。それゆえ,そこに注目して考えて行くことは,今後の教授法,学習法の改良になんらかの役に立つのではないだろうか。中国語に"教学jiaoxue"(jiaoxueは現在中国で用いられている「ピンイン」と呼ばれる発音表記法で,あえて日本語の片仮名表記にするならば「チャオシュエ」となる)という言葉がある。中国語の辞書には「教師が知識,技能を学生に伝え授ける仕事。それは教師が教え,学生がそれを学ぶという共同作業である」と説明されている。具体的にいえば,教師にとっては「何をどのように教えていくか」ということであり,学生にとっては「教えられたことをどのようにして自分のものにしていくか」ということで,その統一が"教学"であり,それは繰り返し繰り返し行われ,また決して一方通行ではなく相互に影響を及ぼし合っていくものなのである。こう考えると,語学学習はまさに"教学"という行為に他ならない。本文は実践女子大学という"教学"の場において,学生に行ったアンケート,日頃学生から提起される問題,自分自身が痛感している問題のメモである。その中から,基礎中国語学習における問題を見つけ,その解決法を模索していきたい。