南部北上山地綱木坂向斜の構造解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
綱木坂向斜は気仙沼市東方唐桑地域に位置し,日詰-気仙沼線の東側にあたっている.ここでは,二畳系の登米層群から白亜系の鼎ケ浦層までが,同一のしゅう曲軸をもつ大きな向斜構造をなしている。下位の二畳・三畳系では,しゅう曲軸面に平行なスレートへき開が一様(N10°E,80°〜90°E)に密に発達しているのが特徴であり,その変形様式は種々の小構造からしても,また,地層の分布から知られる大構造からしても,東翼で厚く西翼で薄い,非対称せん断しゅう曲である.中部ジュラ系の唐桑層群では,スレートへき開は,下位層中のものと同一の方向に発達するが,それにくらべて発達が弱く,不規則断続的である.また,一部では層理面での滑りを伴なう.したがって,その変形様式は,典型的なせん断しゅう曲と曲げしゅう曲の中間型に相当する.上部ジュラ系の鹿折層群では,もはやスレートへき開は存在せず,層理面での滑りを伴なった典型的な曲げしゅう曲である.顕微鏡でスレートへき開の密度を測定すると,下位層から上位層にゆくにしたがって漸次減少し,ついにはまったくゼロになる.また,稲井層群や唐桑層群の基底には不整合面が存在するが,これらの面を境にして変形の様式が急に変るようなことはない.以上の観察から,下位から上位にゆくにしたがって,せん断しゅう曲から曲げしゅう曲に変り,両者の関係は漸移的であることがわかった.さらに,綱木坂向斜は一回の(あるいは一つづきの)地殻運動によってできたもので,両老の変形様式の相異は,主として封圧など"深さ"による物理条件の相異によると考えられる.
- 地学団体研究会の論文
- 1969-11-25