漂流するアマモから得られたネムグリガイ
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概要
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ネムグリガイZachsia zenkewitschi Bulatoff & Rjabtschikoff, 1933は,スガモPhyllospadix iwatensisやアマモZostera marinaなどの海草の地下茎に穿孔するフナクイムシ科の二枚貝である。本種は極端な性的二型を示し,幼生の浮遊期間は極めて短いことが知られている。本種の広範囲な分散は,成体がホストである海草とともに漂流することに起因するという説がある。筆者は宮城県石巻漁港において,漂流しているアマモの地下茎中より本種の生体を発見し,上記の説を支持する初めての直接的な証拠を得た。本種は主に海底から露出する地下茎に生息するため,ホストである海草とともに漂流する機会が多いと思われる。また,雌が矮小雄を保育するため,1個体の雌が漂流するだけでも,遠隔地に新たな個体群を確立させることができるだろう。本種はさらに,地下茎そのものを主な餌とし,セロファン質の膜が軟体の周囲を覆うという特徴がある。それらの特徴は,餌の欠乏や地下茎の物理的損傷など,漂流中の環境ストレスに対して有利にはたらくと考えられる。
- 2006-09-30