大学における進路教育と学生の進路選択に関する研究(2) : 短期大学生のライフコース展望を中心として
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概要
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本稿では、短期大学生のライフコース展望の課題を進路に関する意識、職業や将来生活に関する意識をもとに明らかにし、それとの関連から進路教育の課題を提起する。短期大学新卒者の就職率は1990〜91年をピークに2000年までほぼ一貫して急激に低下し続け、反対に、一時的な仕事に就いた者や無業者の率が1991年から2000年までほぼ一貫して上昇してきた。進路指導が高等教育機関においても課題となっている。学生の進路選択にあたっては、ライフコース展望が重要な意味をもつ。ライフコースとの関わりは職業キャリア選択において大きな要因となる。ライフコース展望とは「将来を視野に入れた現時点」であり、そこにおける「選択と制約」双方に対する認識はアイデンティティ形成を促す。短大生対象の調査結果から、働き方に関する意識では、項目によって男女間に若干の差はあるものの、有意な差は認められなかった。伝統的就業観についても、男女のどちらに偏るということはなかった。性別役割、ジェンダーに関する意識では、ほとんどすべての項目において男女間に開きがあり、統計的に有意な差が認められた。ここでは、伝統的な性別役割意識が男性に強く現れる傾向がみられた。職業と家庭の折り合いについてみると、男女間に相違はなく、女性の希望とそれを容認・支持する男性の態度とが全く符合するかのように似通った傾向であった。将来の収入予想のパターンとモデルを男女間で比較したところ、男性は少ないパターンとモデルに集中し、女性はより分散する傾向がみられた。また、男性の収入パターンの大半は加齢増収モデルに該当し、減収を伴うモデルは女性の方が多かった。女性の方が家庭ライフイベントにより影響を受けやすいライフコース展望の現れと考えられたが、分析結果からはこの仮説は支持されなかった。また、伝統的性別役割分業意識を抱いているか抱いていないかによって、職業と家庭の折り合いにつけ方に明確な差が出ることが示された。進路教育の課題は、ライフコース展望を現実的にもてるよう支援することといえるだろう。特に、女性における職業キャリアと家族キャリアの関連については先行研究が多いが、男性のそれが重視されなくてよいということはない。