老いのモダニズム(承前) : 「壮年期-谷崎潤一郎論」その十二
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概要
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谷崎は「鍵」以後三度死の危険に見舞われながら、忍び寄る死を出し抜こうとするかのように精力的な仕事をし、そのなかから傑作「瘋癲老人日記」が生まれる。「夢の浮橋」までの「松子・重子もの」に区切りをつけて、あらたに「嫁」の渡辺千萬子との関係から新境地をひらこうとしたものである。それは関西との四十年にわたる関係を事実上終わりにし、作家としてより自由な場所へ解放されようとするものであった。その自由感とともに突然死が訪れるまでをたどる。