Stoweの庭 : 文学思潮に及ぼしたイギリス庭園の先進性
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概要
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BuckinghamshireのStoweにある庭園は、Sir Richard Temple (Lord Viscount Cobham,1675-1749)が所有し、一般的にStoweと呼ばれる。このStoweの大部分が造られた時代は、18世紀である。イギリス18世紀の庭は、それまでの幾何学的(geometrical)、対称的(symmetrical)で、規則的(regular)な要素が支配する整形庭園(formal garden)から、物のあるがままの不規則(irregular)に価値をみて、自然そのものを庭の理想的な姿としてとらえたものである。こうした庭園は、大陸の様式を吸収し、それを忠実に移植する段階を経て、18世紀、突如という印象を与えつつ、欧州大陸の文化に対する憧れを捨てて、イギリスは庭園として自然の『造型の集積』によって、一転して、欧州の衆目を集める文化を獲得した。不規則(irregular)を美意識と許容したことで、イギリスは、イギリスらしい美意識を自然に対して確立し、キリスト教の楽園Edenの園の自然描写とギリシャ・ローマ文化のGolden Age,Elysian Fieldsに描かれた自然描写の融合と、ルネッサンスにおけるこうした自然描写の認識を経て、これらの自然描写をイギリス独自の庭園という具体的姿として、造りあげることに、西洋において成功したことになる。その最高傑作こそStoweである。本論では、Stoweを中心軸に置き、そこに交差した文学や美意識に関わった人々を見詰めて、自然らしい自然への傾斜は、18世紀イギリスの文学や美意識論が及ぼした影響よりも早く、イギリス庭園にあったことを確認したい。
著者
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