男女の関係の変化と間接性の時代 : B.A.メイソンの「シャイロー」
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概要
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Bobbie Ann Masonは、新しい価値観と従来の価値観との間で悩む人物を好んで描く。この《新しい価値》と《従来の価値》との対立は、メイソンの小説中ではしばしば《移動》と《定住》という対立に置き換えられる。産業社会の発展に伴い、都市へと人口が流入し、一つの土地に定住する農村型の生活様式が、特定の土地に定住しない都市型の生活様式に取って代わられる。地方の農村への定住と浮き草のような都市生活という対立の図式は目新しくはないが、メイソンがこの問題を執拗に描くことも、生い立ちを考慮すれば納得がいく。メイソンはKentuckyの農家に生まれ、大学卒業までを生地で過ごし、その後New York州立大の大学院で学ぶ。1986年に来日した際に開催された朗読会において、メイソンは南部から北部に生活の場を移したことに起因するカルチャー・ショックを自らの創作活動の背景として説明している。"Shiloh"は30代半ばの夫婦が直面した夫婦関係の危機と崩壊の物語であり、ここに描かれる夫婦のすれ違いも、この《定住》と《移動》あるいは《従来の価値》と《新しい価値》との間に生じた亀裂として読むことは可能である。
著者
関連論文
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