自叙伝の研究と自叙伝による研究 第一報
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概要
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筆者は生徒や学生を理解する上に彼等の自叙伝を求めることが役立つものであると強く印象されている。今まで多くの自叙伝が集められたが、最近数年は筆者が大学において教育心理学を講義する始めに自叙伝を書かせ、学年の終においてはこれに教育心理学的な解釈をさせることにしている。その自叙伝については妥当性や信頼性の問題があるが、どうしたならば妥当にして信頼することが出来る自叙伝を書かせることが出来るかを考えて見た。筆者は真実感に満ちたよい自叙伝を模範として読むことが、年々自叙伝の質を向上させるに役立つことを見出した。自叙伝は個人の理解に直接役立つが、又それを資料として多くのことの研究にも役立てることが出来る。その一つとしてABCDという四つのキリスト教主義大学の学生の宗教を探ぐって見ることにした。C大学の資料は昭和三十年度のものであるが、A、B、Dの三大学の資料は昭和二十九年度のものである。Aの資料は男子六六名、その中一二名がカトリック信者で一八%であり、Bの資料は女子二八名、その中九名がカトリック信者で三二%、C大学は男女共学、男子一〇名、女子一九名の資料で合して二九名中一〇名がプロテスタントキリスト者で三四%、Dは女子短大で資料は四〇名、その中二六名がプロテスタントキリスト者で六五%となっている。全体を合して資料は一六三名分でありその中キリスト教徒数は合計五七名であって、三五%に当る。これは国立大学などに比して非常に多いキリスト教徒の割合である。各大学からそれぞれ若干の例を取って叙述の紹介を試みた。それぞれに特色がある。国立大学の学生にとって社会思想が目立った問題であるが、キリスト教大学の学生にとっても、宗教は個人の問題だけでなく社会をどうするかの問題となっていることが看取出来る。
- 国際基督教大学の論文