マレーシアにみる発展途上国における会計基準の発展(3)
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概要
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本稿の目的は,発展途上国において,経済の発展とともに会計基準がどのように設定されていくのかについて,マレーシアを事例として考察することである。90年代後半から2000年代初頭にかけて公表されたMASB (Malaysian Accounting Standards Board)基準には,資産負債アプローチへの傾倒という特徴がみられる。そのような特徴をもつ会計基準が設定された理由を,当時のマレーシアの経済的背景を観点として検討する。マレーシアでは,2000年代初頭まで,製造業の成長に重点を置いた経済計画のもと,経済開発が進められていた。MASB基準にみられる収益費用アプローチという特徴は,製造業中心の経済に適合性をもつ。その意味で,マレーシアでは経済発展ならびにその過程での産業構造に適した会計基準の設定が試みられていたといえる。このことは,発展途上国が経済発展を遂げる過程において,一時的にIAS (International Accounting Standards)/IFRS (International Financial Reporting Standards)とは若干乖離した会計基準が設定される可能性を示している。