ISLAM AND ENVIRONMENTAL IMPROVEMENT IN INDONESIA: Field Report on Muslim Activist Efforts at the Grassroots Level
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概要
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地球環境の劣化阻止と改善の努力の中で、近年、広汎な市民参加を目指して、人々の間に根付いている伝統的な宗教的・倫理的価値を再解釈してアピールし、人々の態度の変化を導く方法の有用性が認識され始めている。このレポートでは、世界最大のムスリム(イスラーム教徒)人口を擁するインドネシアで、イスラームと環境問題がどう結びつけられ、ムスリム活動家が環境改善にどのように取り組んでいるか、現地調査に基づいた観察事例を報告する。中村はインドネシア最大のムスリム組織であるナフダトゥール・ウラマー(NU)とムハマディヤーの婦人部が、ともに、環境問題に真剣に取り組んでいる実態を報告する。とくに、注目される点は、両者ともに、社会教育や学校教育を通して、イスラームの世界観や価値観から見た環境問題へ取り組みを女性や児童に浸透させようとしている事実である。イスラームでは、人間は神の地上における「代理人」(カリファー)とされ、神の被造物である自然の保全に責任を持つとされる。NU女性組織のムスリマートは家庭の主婦用のガイドブックを作成し、全国で3万カ所以上の祈祷グループに配布している。そこでは、イスラームの教義から具体的な家庭ゴミの処理方法までが平易に説明されている。ムハマディヤーの婦人組織アイシヤーは1万カ所以上の教育施設─幼稚園から大学まで─で使われる環境教育の教科書を準備中である。幼稚園用の教科書では、童謡やお遊戯を通して、児童に環境保護と改善の動気付けが試みられている。数十万人におよぶムスリマートやアイシヤーの活動家が全国の草の根レベルで活動しているので、その影響は極めて大きい。青木は中部ジャワの農村と都市における環境改善の試みについて報告している。活火山ムラピ山麓のサワガン村では、婦人たちのグループが「アリサン」という伝統的な頼母子講とコーラン学習の活動を核にして、さらに環境の改善にも取り組んでおり、具体的には家庭ゴミの分別とリサイクルを実践している。さらに、近隣のプサントレン(イスラーム宗教塾)では,キャイ(塾長)の指導の元に、サントリ(塾生)たちがコーランやイスラーム学の学習に加えて、牛糞によるバイオガスの発生(塾生のための料理用に使われる)や有機肥料による農業に従事している。古都ジョクジャカルタ郊外の新開地ウンブルハルジョ地区の近隣組織における事例では、多様な宗教的文化的背景をもった住民の中で、ムスリム活動家たちが率先して、「緑の村」運動を積極的に進めている。具体的には、植樹、下水処理施設の建設、河川の浄化、家庭ゴミの分別処理、コンポストの利用、買い物カゴの利用(プラスチックのショッピングは使わない)などの活動である。この近隣組織の代表は2007年末、バリ島で行なわれたCOP13の国際会議に参加した。
著者
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