視覚障害学生用学習教材作成上の著作権問題処理について : パソコンによる点訳上の問題点
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概要
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高等教育機関の視覚障害を有する学生達にとっては、次々と出版される墨字本の点訳による新しい知識の修得は不可欠であり、また論文講読や卒業研究等の授業では教科書の他、学術論文の点訳も必要となってくる。ここでは学習教材のパソコン点訳に的を絞って、実際に学習教材を作成する立場から著作権法上の問題点を挙げるとともに、その望ましい解決法について検討した。ここで検討したパソコン点訳法は、墨字本をスキャナに読みとらせて、パソコン上に墨字テキストファイルを作り、次にこのファイルを、かな分かち書きと点字データを含んだかな点字ファイルに変換する方法である。この方法では、いったん漢字かな混じりの墨字テキストファイルができるため、たとえ一過性にしても墨字テキストファイルが、複製権の適用を受けず、その存在が許される必要がある。さらに、重要なのは、かな点字ファイルの扱いである。点訳の際にできるこのかな点字ファイルは、かな分かち書き文とそれに対応する点字データとが一体となっており、校正、録音教材の材料としてその利用価値は高く、また晴眼者には図書としての利用価値がほとんどないことから、かな分かち文を含んでいるにもかかわらず、パソコンや記憶媒体に恒久的に保存されて自由に使えるよう是非著作権上の権利制限をすべきであると考える。パソコン点訳の施設制限はないが、このファイルは録音教材としての側面もあるため、録音図書を作成できる施設の制限に触れる可能性もある。従って、録音図書を作成できる施設の制限撤廃もこの際必要であると考える。また、自由なネットワーク送信による効率的利用という面からは、公衆送信権の制限も必要であると考える。