莫逆の友 河島皇子
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概要
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河島皇子は大津皇子と莫逆の契りを交わしながら、大津皇子の謀反を密告した人物として『懐風藻』伝記は扱っている。一般に『懐風藻』の伝記は詩作品と関連性を有しているのに、『懐風藻』中に遺る彼の詩「山斎」は、この事件とは関係を持たない春の宴の詩と見られて来た。しかるに、語句の検証により、その詩は事件一、二ヶ月前の作と考えられ、伝の記述とつながってくることが分かる。大津皇子との親交によって、河島皇子はむしろ朝廷側から疑惑を招いた可能性があり、彼は莫逆の契りを守り、大津皇子を弁護することによって、かえって密告者の熔印を押される結果となったのであろうと思われる。