意味と統語から見たトイウの機能(斎藤武生先生 退任記念号)
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概要
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本稿は、[XトイウN]におけるX (修飾部)とN (主名詞)の関係を例示関係として捉え、XはNの例として[XトイウN]全体で1つの「タイプ」を表すと考える。そしてこのような[XトイウN]の例示関係はXが名詞である「語のレベル」だけでなく、Xが「文(名詞節)のレベル」においても成立することを示す。Xが文(名詞節)レベルの場合、トイウの生起はXの事態タイプによって異なり、それぞれの事態タイプは時制解釈、PRO主語解釈と連動する。その結果、トイウの有無が、「個別」対「タイプ」、「具体」対「概念」、「現実」対「非/未現実」の対立を作り出すことを提示する。しかしXとNの関係性は、話者が事態Xをどのようにとらえるか(話者の認識や事実認定)によっても左右される。先行研究(寺村1975〜1978)では主にNのタイプによってトイウの介在が論じられてきたが、本稿では先行研究での成果を取り上げる形で、より大きな文(主文)や談話レベルでの観点からも考察を加えた。このようにトイウを俯瞰的にとらえることで、語のレベル、文(節)のレベルだけでなく、より大きな文(主文・談話)レベルにおいてもトイウの例示機能が関わることを提示する。