化学的手法による北極海の研究(2008年度日本海洋学会岡田賞受賞記念論文)
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概要
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化学トレーサーを用いて,オホーツク海および北極海における海水の変質・混合過程を調べた筆者のこれまでの研究を紹介する。海水の酸素同位体比から,オホーツク海中層に海氷生成の影響を受けた水が広がっており,中層水に含まれるこの水の割合は20%であることが分かった。CFCsの分布からは,海氷生成と潮汐混合が中層の通気に重要であることが示された。さらに,中層水の水温・塩分には海氷生成よりも潮汐混合の影響がより大きいと見積もられた。過去の酸素同位体比とアルカリ度のデータを用いて,北極海全域における融氷水/ブラインとその他の淡水を識別し,これらの分布を示した。さらに,北極海の中でも特に淡水が多いカナダ海盆の淡水収支を,栄養塩と酸素同位体比を用いて明らかにした。また,この際に水塊識別のトレーサーとして用いた海水中の窒素とリンの関係に着目し,北極海経由の水輸送が,海洋の窒素収支をバランスさせるための働きをしているという説を提唱した。
- 2009-01-05