点数方式によるX線曝射条件の規格化とその共線図表式計算尺に関する研究
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概要
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今日X線を人体のあらゆる部分に照射し,時には適当な造影剤を用いて,人体内の大小様々の微細な病変をフィルム上に描出してもろもろの病症の器質的診断に多大な寄与していることは今更いうまでもない。ところが,その照射対象である人体の部分は厚みは厚薄さまざまであり,内部に骨質が多い部分もあれば,肺のように空気を含んでいる臓器もあり,時には石灰化している部分もあってX線の吸収・散乱が著しく異なる。上述のような被撮影部分の状態に応じて,適当な硬さのX線を適量に照射してこそ,始めて鮮鋭であって,かつ,対比度(いわゆるコントラスト)のよいX線像が得られるのである。著者は,かねてより,被写体である身体の各部分に正しく対応するX線を照射する条件を規格化し,被照射身体部分が必要とするX線の強さ,量を需要点数と名付け,これに正しく対応する投与X線の強さ,線量を供給点数と名づけ,需要点数=供給点数の等式が成立するところに,始めて対比度のよい鮮鋭なX線像が得られるという考え方に立って研究を進めた。この需要点数も供給点数も何れも正負の整数であって,稀れに0.5という点数が導入されることがあるが,大ていの場合1,2,3,…n点という正の整数で間に合うにしたのである。この点数方式によってX線照射条件が規格され,需要点数に見合うだけの点数を供給すればよい,という基本原理が確立されたので,その計算を迅速,簡単化するために共線図表(colinear nomogram)を応用して,特種の共線図表式計算尺を試作し,これを日常のX線照射条件の設定に利用し,各被照射体の最適管電圧を容易に見出だし,また,胸部の高圧撮影に当っては予めきめられた管電圧において胸厚の厚薄に対する最適〔mAs.〕値を推定することもできる。かくて被照射体の厚さ,骨質の多少に対応するX線照射を行い,鮮鋭で対比度のよい優良な診断価値の高いX線像を作れるようにし,かつ貴重で交換が仲々困難であるX線管,とりわけて高価な回転陽極X線管の寿命を著しく長くすることができることに思いついたのである。他面においてこの点数系統に至大の影響のある 焦点フィルム間距離(FFD) 増感紙の増感率の高低,使用または不使用 散乱線除去格子の使用・不使用 X線装置の整流方式 ギプス包帯を装着する場合 など,できる限りの補正点数を考慮して,現在Xの線照射条件に即応するにし,その上,それらの補正点数を算定図表計算尺を使用するときに,補正点数を増減して,照射条件の変化に対応できるように考按した。また,近来のコンピュータの発達に即応して,被写体の需要点数の制定は,日々多数の患者の迅速処理に当って,撮影処理・能率化に寄与し,かつ,それらの症例に対応する最適の供給条件,特に管電圧,管電流照射時間の選定には多大の寄与できるであろうことは自明の理である。
著者
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