観光事業における人材と教育
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概要
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本稿は,筆者がこれまで受けてきた教育,観光地計画に従事した経験,近年のわが国における観光事業の現状を元に,観光教育の課題,将来像について考察したものである.これまでわが国の観光関連業界,中央行政府などが観光に関わる専門家・人材を特別に求めてきたとは思えない.実社会が求める専門家・人材と大学における高等専門教育は,少なくとも観光分野に関する限り同一線上にあったわけではない.大きな課題のひとつである.原点に立ち返れば,中央行政府,地方自治体,実業界そして大学の所謂「産・官・学」でもう一度観光に関わる専門家・人材の育成について議論検討し,職業的に具備すべき条件の習得を含めて認識を共有することがスタートになる.翻って観光分野の大学・大学院の現状を冷静に分析・評価すれば,少子化を展望するまでもなく,再編再生は必須である.今後を展望すれば,大学院が専門家育成の中心として存在しなければならないが,その前提として大学の学部・学科の「教養学」を中心としたカリキュラムの再編・再整理の必要性が出てくるのではないか.その中でも「観光論」,「観光学概論」の充実が望まれる.同時に大学及び大学院における「教える」人の"質"が厳しく問われなければならない.また,観光立国が提唱される現在,地方自治体,特に市町村自治体における観光行政の専門家の体系的育成が急務であるが,既存の観光学部,観光学科は人材の育成も含めてこの問題にほとんどコミット出来ていないという課題がある.
- 2008-07-31