観光業界におけるホスピタリティの理論的考察
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概要
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人間の歴史が始まったときからホスピタリティは意識され,人々に受け入れられ育まれながら現在の概念へと進化してきた.しかしながら,産業革命によって交通手段とそれに伴う観光事業が大きく影響を受け,ホスピタリティという概念が今日学術研究の対象として考えられるようになった.すべての学問分野において言えることであるが,新しい研究の初期段階では,研究対象を明らかにする試みはその方法論においても試行錯誤の連続である.このホスピタリティも同様で,新たな研究領域の確立には,観光業界に従事する実務者はもちろんのこと研究者においても,ホスピタリティの定義や特性に対して統一された見解を持つまでに至らなければならない.本研究の目的は,ホスピタリティの意味範囲と特性を明らかにすることであるが,同時にこの統一見解を確立する作業に加わる根幹的な議論を提示することを副次的な狙いとする.まず,観光業界に従事する者に特に際立って見受けられるホスピタリティを利他的行動として位置づけ,そうした行動がなされる理由を,遺伝学と社会学の知見を借りて吟味を行う.さらに,サービスが機能的サービスと情緒的サービスから成るとしたサービス理論を基に議論を展開する.その上で本研究は,情緒的サービスとホスピタリティが営利行動と利他的行動という全く異なる精神から発していると位置づけた.観光業界と観光研究の文献に頻繁に認められるサービスとホスピタリティの混用は,勤務中のホストが提供する商業活動としてのサービスと個人的な人間関係の一環としてのホスピタリティを,ゲストが区別できないことに起因していると考えられる.
- 2007-07-31
著者
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