ホスピタリティと観光事業
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概要
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本論文は,「ホスピタリティ」の語義と用語法の変遷を分析したうえで,観光事業におけるホスピタリティに関して,意味と役割ならびに課題について考察したものである.ホスピタリティは本来的には他者を歓待する行動規範を意味していたが,第二次大戦後に誕生したビジネス用語としてのホスピタリティは,これとは大きく異なる意味・内容をもっており,かなり曖昧さのある概念である.歓待精神を意味するものとしてのホスピタリティの基本にあるのは「実践することそのものに価値がある」とする無償性の原理であるが,ビジネス用語としての基本にあるのは「利用客に満足を与えるために配慮し行動する」ことを意味する有償性の原理である.問題は,歓待精神としてのホスピタリティをビジネス行為の一部として位置づけ,両者を混用していることであり,提供側の利用客に対する責任行為の一部を,接客応対当事者に無償の付加的行為のように位置づけ期待し,強要する傾向がみられることである.ホスピタリティが曖昧なままに多用される理由は,機能的でビジネス用語としての意味合いが強くなったサービスに代えて,より人間味が感じやすい新たな言葉を求められたことにある.ホスピタリティを観光領域での専門用語としては,歓待精神・行動規範としての意味でのみ用い,ビジネス用語との混用を避けることが必要である.
- 2006-03-11