青年ヘーゲルの転回の問題(1)
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概要
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ヘーゲルはベルン時代に彼独自の仕方でカント的道徳宗教の考え方を受け容れた。フランクフルト時代(一七九七年〜一八〇〇年)では、その批判を含んだ、「愛」により開示される「生」という考え方に転換する。この転換がカント哲学への批判的取組みから生じたのかどうかは別にして、いずれにせよここにカント哲学をめぐる転回を問題にすることができる。では、この転回はいかなるものとして捉えたらよいのだろうか。それには次のような点が明らかにされねばならないと思われる。第一に、そもそも転回が生じたと見れるのかどうか。生じたとすれば、いかにして、いかなる根拠で生じたのか。第二に、その結果生じた新しい考え方はいかなる意義、性格、特徴を有するものと規定できるか。第三に、新しい考え方によって彼の問題は基本的には解決してしまったのかどうか。そうでないならば、いかなる問題点が残され、次のイエナ時代に引継がれていくことになるのか。本稿ではさしあたり第一の点のみを取り上げることにする。ところで、従来、フランクフルト時代に転回が生じたかどうかについては賛否両様の見方がある。また転回が生じたとする場合、その根拠として外因(他の思想家からの影響、時代の危機、生活環境の変化等)を挙げるもの、内因(心理的危機、過去のヘーゲルの思想のモチーフ等)を挙げるもの、両者の関係を挙げるもの等、様々である。そこで、一節ではこれらの点について研究史に多少立ち入り、整理と批判的検討を加え、二節では転回成立にかんする私自身の解釈の方向を提示し、三節ではそれをフランクフルト時代初期の諸断片の展開の中で確認することにしたい。
- 駒澤大学の論文
著者
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