自己評価のための準拠集団 : Hymanの1942年段階の研究傾向について
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概要
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高学歴の取得が社会的位置の移動をうながすという期待は,古くから存在するものである.しかし現実は必ずしもその期待に応えるものではない.潮木守一がシミュレーション・アプローチによって解明したように,学歴取得が社会的位置の上昇に貢献するのは,一定の限度内においてである.この限界性はすでに現在の日本人の多くによっても,直観的に認識されているもののようである.それにもかかわらず,日本では高学歴化が急速に進行している.大学進学希望者の急増は教育白書等によっても確認されている.そしてその大学進学希望の内容としては,「せめて大学くらい」「世間なみに」という種類のものが多い.社会的位置上昇への貢献度が小であるという現実のもとにありながら,「世間なみに」という意識が大学進学率を上昇させている現在の日本を分析するためには,準拠集団(reference group),準拠個人(reference individual)の概念をもとに仮説を構築するのも,一つの方法であろう.筆者はこれまで,大学進学率上昇時代の同世代人として,日本の教育現実を注目してきたが,その現実を分析するための理論的支柱を,準拠集団理論に求めざるをえなくなった.その準拠集団理論のうちでも,特に筆者の関心をひいたものが,Hymanの理論である.Hymanの代表的な貢献には,1942年に著された論文と,1952年の論文集に収められた論文とがある.この二つの論文を比較検討するなかで,筆者自身の研究仮説を構築したい.本稿は,その作業のうちの前段階,すなわち1942年の論文の,論理構造を確認しようとするものである.この論文は,インタビュー資料などを豊富に含むが,このことはかえって,この論文をそのまま読んだのでは,彼の論理構造を直ちに理解することを困難にしている.筆者は以下本稿において,筆者自身の見解・批判も加えながら,Hymanが1942年に"The Psychology of Status"において展開した論理を体系化してみたい.
- 駒澤大学の論文
著者
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