坐禅に関する心理生理学的研究
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概要
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本研究は,心理生理学的立場より呼吸-循環系の活動について明らかにし,調息の意義と効果について検討したものである.1)坐禅中,呼吸数は減少する傾向にあるが,心搏数はわずかに増加する.2)EEGの徐波化,呼吸数の著しい減少とともに,心臓血管系の一定水準の活動状態が見られる.3) 1)と2)より,坐禅中は副交感神経系が優位の状態にあるが,交感神経系の一定水準の活動は持続していると言える.4)坐禅中,呼吸数が著しく減少しても,心臓機能の変時性の活動はほぼ安定している.この安定は,長期間の調息訓練によって得られるものである.5)坐禅中,下肢の末梢血流は著しく抑制され,上肢の末梢血流もわずかに減少する傾向にある.6)坐禅中の呼気延長呼吸の制御過程は,意志作用により有意的に行なわれており,修行経験を積むに従って意志作用を必要とせず,無意的に行なわれると考えられる.また,呼気延長呼吸は心臓血管系にも自然呼吸とは逆の形で影響を及ぼすが,制御過程と同様に修行を積むに従って心臓血管系に及ぼす影響も少なくなる.7)坐禅中の呼気延長呼吸の中枢機序は,自然呼吸とは全く逆になっている.つまり,自然呼吸では呼息相で受動的に活動している神経機構は,呼気延長呼吸では呼息相で能動的に活動していると見ることができる.8)坐禅中の呼気延長呼吸によってもたらされる腹圧は,自然呼吸よりもはるかに高くまた長時間維持されている.このような腹圧は,坐禅中の呼吸系を支える重要な要因である.