東南アジアの民主化支援における国際NGOの役割 : 選挙監視活動を通じた国内NGOとの連携
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概要
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選挙は紛争後の国家建設において重要な第一歩になる。しかもその実施される選挙は「自由で公正な」選挙でなければ、正統な政府として国際社会から認知されないばかりか、国家建設に向けて必要な国際社会からの支援も得られなくなる。そこで、当該国は外国政府、国際機関や国際NGOに選挙監視を要請する。東南アジアの政治体制をみると、国家主導の開発独裁体制や軍事政権を過去に経験したり、あるいは現在においても継続している。そのなかで、かつて開発独裁体制下にあったフィリピンやタイの市民社会/NGO(非政府組織)の民主化運動の経験が、他の東南アジア諸国のそれらに大きな影響を及ぼした。例えば、スハルト開発独裁体制下の民主化運動においてもそれが該当する。本稿ではスハルト開発独裁体制の崩壊を次の三つの市民社会/NGOレベルの支援プロセスから考察する。まず西欧諸国政府と連携した西側国際NGOの役割から、次にアジアのトランスナショナルNGOの役割から、最後にインドネシアの国内NGOの役割から考察する。つまり、三つのレベルの市民社会/NGO支援には共通の「グローバル・スタンダード」があるのか。それは、西側先進諸国が目指す「グッド・ガバナンス」に収斂するのか。また、かつてアジアの権威主義体制を主導した政治指導者が体制擁護に用いた「アジア的価値観」や「アジア的民主主義」を再考する。むしろそれらが、それぞれの地域社会で活動する市民社会/NGOが展開する多様な価値観に裏づけされたボトムアップの民主主義とつながるのではないか。つまり、上記三つのレベルの市民社会/NGO支援は民主主義国家建設を目指している点では共通しているものの、他方でその道程に対する寛容度は相達するのではないか。最後に、西側諸国とイスラム諸国の対立が深刻化している国際関係にあって、多様な価値観を背景に持つ東南アジアの市民社会/NGOは、自らの民主化運動の経験を共有するすることで、国境を超えた橋渡しの役割が期待されている。