日本語とチェコ語の語順の対照研究(人文科学編)
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概要
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本論では、日本文学作品とチェコ語訳との対比コーパスを作成し、統辞構造と情報構造の相関分析によって両言語における語順の働きを対比した。次のことを明らかにした。意味構造について。両言語では、非動詞的な意味成分の順序(BRE)が解釈の広いものから解釈の狭いものへと展開し、「意的な相互調節性」と「共合性」が厳守される。故に普遍の基礎語順への傾向を認めることができる。情報構造について。チェコ語の統辞構造は語尾によって支えられており、従属成分は支配成分の両側に配置され、文型は対称的で、語順は全文型にわたって情報構造を反映している。日本語では文・節の文型は非対称的で、文型の終末部分では語順が固定しているが、主題成分・取り立て成分などの役割は語順によって明示される。統辞構造における成分の長さについて。両言語では共に、従属成分を長さによって再配置する原理(LENG)が作用するが、従属成分が支配成分の左側に集中する日本語では、この原理の効力はチェコ語より遥かに強い。