地震群の発生と火山活動(1965〜1974) : 松代(1965〜1970)とワイラキ・タウポ地震群(ニュージランド)の特性
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概要
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松代群発地震(1965〜1970)は,近年日本に発現した最も顕著なものである。一般に,群発地震はこれまでは火山活動地域に発生する例が多かった。今日的問題としても,伊豆大島(Dec.26 1974)や阿蘇火山外輪山の一の宮に地震(Jan.22,1975)が群発している。本論文の骨格は,南半球の日本とほぼ等緯度,等経度で同じく大陸の東側島弧として位置するNew ZealandやRaoul(Kermadec海溝)の地震群(観測Geophysics,DSIR)を研究し,この成果と上記日本の群発地震の性質の類似,相異,普遍等について研究した。そして,数多くの火山性群発地震の地震回数N(day^<-1>)の検討・解析から,それ等が特徴ある4つの期間に分けられるという類似性が得られた。即ち 第1期 群発地震の開始とともにNは増大するが,しばらくして平衡状態になる。第2期 急激な増大を示して第1ピークP_1が出来る。P_1以後はN=K(t+c)^<-P>(after KIZAWA)で減衰する。第3期 その後は再び増大して第2ピークを形成する。P_2ピークの曲線は(Gaussian)の形を示している事がP_1と対照的な特徴である。第4期 Nは減衰曲線に沿い単調に減少し終末を迎える。地表に変化を見せる現象はP_1が現れてから後で,噴火,熔岩流出,地盤変動等が起るのはこの時点である。松代地震群の場合は局部的地盤変動のみで,マグマの表面突出はなく,震央域では多量の冷水が出現した。これが噴火にかわる地下エネルギーの放出現象であった。誠に驚異且新鮮な記述である。それはWairakei-Taupo(New Zealand)の場合も同様で,マグマが地表に出現せず,その代りに群発地震・震源地域の中心タウポ湖北岸地区に多量の地下水湧出が起ったのである。これによって,地下蓄積の歪エネルギーを放出したと考えられる。現実にこの時点(12月中〜下旬,1964)でタウポ湖の北:岸の舗装道路に自動車の通行困難な程の湧水現象があったのを筆者は観測した。これが"水噴火"(仮称)として新たにここに登場した地下応力解消の物理現象である。本研究の主成果もここにあり,各章の諸事実は,いずれもこの主成果の支柱となった。一方,被害を最小限にくい止める観点から,地震活動の時期や規模を出来るだけ早く予測する事が望まれるが,本研究により,活動ピークの時点で"これがピークである"という判定要素を見出すことが出来た事は,大きな収穫であった。地震群の予知とか,動静判断には3つの要素がある。即ち,1.開始期,2.最盛期,3.終末期であって,いずれの要素も夫々各自の活動時期には,等価値な重要度を持っている事を,この度決定的に知らされた。つまり地震予知とは,開始時期を指示する事だけが,重大なのではないのである。
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