脂質恒常性に関わるABCタンパク質の分子機能(<特集>機能性脂質生産の新たなターゲットを探る)
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概要
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動物はさまざまな食べ物を口から摂取し,消化後,必要な栄養素を小腸から吸収して生きている.単糖やアミノ酸など水溶性化合物は脂質二重層を通過できないため,それらを特異的に通過させる膜タンパク質であるトランスポーターを小腸上皮に発現させ体内に吸収している.一方,食物中に含まれるさまざまな脂溶性低分子化合物は自由に脂質二重層を通過し,体内に吸収される.問題は,それらの脂溶性低分子化合物の中に多くの有害物質が含まれていることである.それゆえ,我々の体は有害なものを何らかの方法で見分けて排出する必要が生じる.たとえば,コレステロールと植物ステロールであるシトステロールとの構造の違いはエチル基ひとつだが,シトステロールは我々の体にとって有害である.我々の体はコレステロールとシトステロールを識別しており,食物中のコレステロールは50-60%が小腸上皮から吸収されるのに対して,シトステロールは排出系が働いた結果5%以下しか吸収されない.最近,ABCタンパク質の多くのメンバーが体内での脂質,脂溶性物質の移動を担っていることが明らかになってきた.上記のシトステロール排出はABCG5/ABCG8が担っている.また本稿で述べるように,ABCA1とABCG1はコレステロールを移動させることによって体内のコレステロール恒常性に重要な役割を果たしている.ABCタンパク質の異常は高脂血症,動脈硬化,糖尿病,老人性の失明,新生児呼吸不全,皮膚疾患など多くの疾病と結びついており,ABCタンパク質の発現や機能を調節することができれば,多くの疾病の予防や治療に役立つことが期待される.
- 2008-10-25
著者
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