ニホンジカ(Cervus nippon)が土壌の有機物分解系および線虫群集構造に及ぼす影響(<特集>ニホンジカによる森林の変化が昆虫類に及ぼす影響)
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概要
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草食獣は土壌生態系の構造と機能にさまざまな間接効果を及ぼしている。草食獣による,植物組織から排泄物への変換,根滲出量の変化,植物中の二次代謝物質や窒素の含有率の変化,植生の変化は,土壌に供給される有機物の質と量を変化させ,その結果植物の成長に必要な窒素の無機化機能に影響する。草食獣が生態系の窒素循環に及ぼす影響の正負は,植物の生産性と採食強度によって大きく規定されると考えられる。草食獣は,土壌線虫の生息密度や群集構造にも影響を及ぼす。ニホンジカが土壌生態系に及ぼす影響についての研究例は少ないが,その影響は採食強度や生息密度によって異なり,窒素無機化速度に対し正負いずれの影響も及ぼしうることが,ミヤコザサの摘葉実験やニホンジカの導入実験から明らかになった。シカの採食量,一次生産量,リター供給量,窒素無機化量の定量的関係を明らかにし,すでに研究の進んでいる植生の変化パターンと対応させ,シカが生態系の養分循環に与える影響を総合的に理解することが必要であろう。
- 2008-10-01