「自由保育」に活かす「I as We, We as Iとしての自己感」を育てる「情動調律」 : 幼・小移行期におけるその意義と役割(人文・社会科学系)
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概要
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「小1問題」を引き起こす遠因が1989年に改訂された「幼稚園教育要領」(「保育所保育指針」も基本的理念は同じ)にあるという言説がある。実際に、保育者から寄せられた新聞投書や小学校教諭へのインタビュー、さらに保育研究者らの論文を通して、1989年の「幼稚園教育要領」の改訂を機に「保育現場では混乱が生じた」との指摘を見出すことができる。この指摘に対して筆者は、いわゆる「自由保育」と呼ばれた1989年の「幼稚園教育要領」以来、指導に戸惑った保育者のもとで、実質的な主体性が獲得されないまま幼稚園(保育所)を卒園した子どもたちが小学校に入学して、「小1問題」が引き起こされたという側面もあるのではないかと考えた。このような状況を踏まえて、本論文は「自由保育」の理念を検討し、その方法を探ることを目的とした。はじめに、1989年の「幼稚園教育要領」の原案は、倉橋惣三(1934)が提唱した「自己発揮や自己充実を見守り援助する保育」にあり、これが「自由保育」であることを明らかにした。倉橋は、子どもが「自発的生活」を発揮し充実するための方法として、子ども同士の「相互的生活」を位置づけている。ここに「自由保育」が今日の「小1問題」を引き起こした遠因のひとつであると指摘されている、その源流があるのではないかと筆者は考え、倉橋の提唱した保育が今日のこの国の子ども達においても十全に活かされるために、倉橋の考えた自己の在り方について検討した。その結果、Piaget-Vygotsky論争(1934)、広松渉(1972)、Stern(1985)、鯨岡峻(2004)を通して、Sternの「自己感」を基底に据えた、「I as We、 We as I」としての自己形成が、とりわけ今日の「自由保育」によって目指されることが望まれる自己の在り方であり、かつ「幼・小移行期」を貫く自己の在り方であることを明らかにした。そのうえで、「I as We、 We as I」としての自己形成を促す方法としてSternの提唱する「情動調律」の有効性について検討した。
著者
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