乳房喪失者の語りに見る「乳房喪失」の意味 : そのライフストーリーに見られる重層的構造
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概要
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本論文は乳房切除術を経験した女性の語りの分析を通して,乳房喪失という経験を主体がいかに意味付けするかを明らかにすることを目的とした。対象者は術後一度退院し,初めての化学療法を目的として入院してきた女性である。フォーマル,インフォーマルなインタビューによって得られた対象者の語りをデータとして質的帰納的に分析し,乳房喪失の「意味」に焦点を絞り考察を行った。乳房喪失の意味は「自己の否定的変化」「一時的苦痛」「立ち向かう対象」「新しい属性」「自己を再吟味する対象」と変化し,それぞれ語り手にとっての自己や周囲世界の見え方と関連していた。また,カテゴリーは時問軸に沿ってほぼこの順序で全対象者に現れた。しかし,すべてのカテゴリーは現時点での状態を語る際にも現れ,時間を経るにつれて複数のカテゴリーが共時的に統合されたものとなっていた。乳房喪失の意味は対象者にとっての多様な意味世界,自己像の変化を反映して重層化し,術後の新しい状況への適応が進むと考えられる。
- 新潟医療福祉大学の論文