家族介護の在り方に関する中山間地域と都市部の比較研究 : 愛媛県中島町と松山市を事例として
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概要
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高齢化に伴う家族介護問題は深刻さを増しているが,従来不明だったその地域性を2地域で比較検討した。愛媛県中島町(中山間地域)と松山市(都市部)の141家族を対象に,介護実態と介護者の心理的状況について訪問調査を実施した。分析は,介護者の生活満足感が介護により変化するパターンを特定し,介護実態との関連を検討した。主な結果は以下の4点である。(1)2地域の介護家族実態には差があり,地域全体の家族実態とは異なっている。中島町では同居家族が多く,子の世代(子,嫁)が主たる介護者であり,松山市では小家族化が著しく,配偶者による老々介護の現状が明らかになった。(2)中島町では介護実態が介護者の生活満足感の変化に反映しており,介護状況が厳しくなると介護者の生活満足感も低下する。(3)嫁が介護者の場合には,2地域ともに生活満足感が低い。(4)松山市では介護者の個別性が生活満足感に多様に反映しており,介護状況と介護者の心理的状況は必ずしも一致しない。以上の結果より,介護問題対策に地域性を吟味することの重要性が判明した。中山間地域では地域政策も含めて家族の弱体化を防ぎながら,公的サポート体制を強化すること,都市部に対しては介護者の心理面へのアプローチが必要である。
- 2005-07-01