中国の都市周辺山村における農業構造改善方策と農家経済の実態 : 近年の北京市東北部山村Z郷の実例を中心に
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概要
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近年,山村農業の構造改善が中国の重要な山村振興政策として進められてきた。本稿では,北京市周辺の山村Z郷を事例として取り上げ,中国の都市周辺山村経済を大きく変化させた農業の構造改善方策の実態と,こうした構造改善の対象となった山村の農家経済の現状と問題点及びその相互関連について明らかにする。Z郷の農業の構造改善は主として郷政府の主導の下に進められたのであるが,(1)より収益性の高い作目の新規導入,(2)山地の賃貸による経営規模拡大,(3)協同組合による農家の組織化等を内容とするものであった。その結果,(1)Z郷内の農業構造は自給的食糧生産から商品生産へ大きく転換した。(2)しかし,構造改善策により新規導入された果樹作経営は水条件が生産の決定的な制約要因となるため,対象地域が限られている。(3)しかも,耕地については,農家世帯員1人当たりの配分面積がわずかであるため,規模拡大の対象は,山地に向わざるをえず,条件の良い耕地の拡大は望めない。(4)従って,果樹作経営の展開には対象耕地の確保と水条件双方に限界があること。(5)そのため各農家にとって収入源としての農外所得の確保は極めて重要であり,その大小が農家所得階層を形成する大きな要因となっている。(6)今後の山村における経営改善のためには,農業構造改善の基礎としての水利施設の拡充と農地整備等を含む総合的な施策が重要である
- 林業経済学会の論文
- 2003-03-01