コモンズ論から見た財産区制度の環境保全的意義 : 滋賀県甲賀郡甲賀町大原財産区有林を事例として
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概要
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本稿は,コモンズ論を分析視座に据えて,財産区有林の今日的意義をその歴史および制度分析から明らかにする。事例対象地である滋賀県甲賀郡甲賀町大原財産区は,財産区有林からの収益によって,地区内の道路,農業用の貯水池,小学校校舎等をはじめとする地域の社会資本を整備し続けてきた。それが存続してきた要因としては,住民総出の林内整備,年2回開催される山の祭典等の旧慣行,学校林での植樹活動や愛林教育,地区内で発足した森林ボランティア活動等を通じた丹念な森林管理があった。そのような地区住民の財産区有林との非貨幣領域での関わり,すなわち共的セクターでの営為が,優良材として知られる当地区の「甲賀ヒノキ」の美林を維持することに寄与してきたことが判明した。全国にある財産区の多くは,地域の社会資本整備に寄与してきた歴史を持っているが,そのような財産区の地域貢献は,その収益使途が「共益」とも言える地域の公益に制限されていた故の産物である。本稿は,そのような財産区の制度的特徴や地区住民の共的セクターでの営為が,現代の地域環境の保全に示唆的であることを指摘した。
- 林業経済学会の論文
- 2001-12-15
著者
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