森林管理としてのコモンズの理論と実態 : 山中湖村入会地を通じて
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概要
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コモンズに関する理論的考察とそれに基づく実態分析のために,山中湖村林野入会地の変遷を通じた事例分析を行った。欧米諸国で展開されているコモンズ研究では,所有に基づく分析が中心であり,コモンズの所有と利用と管理にかかわる多様性を見落としていた。一方コモンズとしての入会地研究は,江戸期の分析が中心であり,どのような権利関係によって近現代社会に適応してきたのか,またどのような問題があったのかについての考察に欠けていた。本論文では,山中湖村を事例として,近世・戦前・戦後の3つに時代を区分し,産業構造変化,地盤所有の変化,利用・管理主体の変化,利用・管理内容の変化の4点について考察した。その結果,第一に近代法制度の下では,権利関係としてコモンズが存続するためには,地盤所有が明確な私有財産か公有財産である必要があった。第二に,「共有の性質を有さない入会地」のように,所有と利用・管理が分離するコモンズと,「共有の性質を有する入会地」のように所有と利用・管理が結合するコモンズの2つが存続していた。第三に,産業構造の変化に伴い事実関係としてのコモンズが崩壊しコモンズの形骸化,組織の高齢化などの問題点が確認された。
- 林業経済学会の論文
- 2001-07-16