連続と断絶 : 二十世紀初期中国の歴史教科書における黄帝叙述
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概要
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中国史の起源をめぐる議論のなかで,黄帝は必ず登場する人物あるいは神である。黄帝に関するこれまでの研究は,黄帝をめぐる記憶が絶えず創造されるものであると主張する説と近代ナショナリズム概念の影響による黄帝の記憶の断絶を強調する見解に分けることができる。本稿は,近代中国の歴史記憶とアイデンティティに関する筆者のこれまでの研究の一環として,二十世紀初期(清末・民国初期)に出版された歴史教科書の黄帝の叙述・図像に焦点を当てて,黄帝研究の視線を非日常の世界(ラジカルな知識人の世界)から日常の世界(オフィシャルな知識を普及させる教科書の世界)へ,近代ナショナリズムの祭壇にまつられた黄帝から学校の教室のなかの黄帝へと移し,「連続」と「断絶」という二つの側面をもつもう一つの黄帝像に接近しようとするものである。
- 2008-10-25