呼吸リハビリテーションを行っている慢性呼吸不全患者B氏が体験している困難さについて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,慢性呼吸不全患者が呼吸リハビリテーションで学んだ呼吸法や呼吸と活動の調整の仕方を,その患者の馴染んだ対処の仕方で活用できないために生じる困難さを明らかにすることである。研究に同意を得られた,呼吸リハビリテーションを行う目的で入院している慢性呼吸不全患者B氏を対象に,面接法及び参加観宗法によりデータを収集した。その結果,B氏の馴染んだ対処の仕方は「動き始める前から動き終わるまで一連の動きの流れを作り動く」であった。B氏が,呼吸リハビリテーションで習った技術を日常生活に活用できないことで体験している困難さには「身体の力を抜いて息が吐けない」「意識していても,何か動作するときにフッと息を止めてしまう」「自分の身体に合った動作の速さが保てない」「動作途中で休憩を入れるタイミングが切り替えられない」「息苦しさが治まるまで素直に休めない」「自分が理解している病気の状態に合わない省エネ動作を受け入れることができない」「わずかな動作の負荷によっても呼吸と動きの調整がずれてしまう」があった。以上の結果から,慢性呼吸不全患者B氏が,呼吸リハビリテーションで習った技術をB氏の馴染んだ対処で活用できないために生じている困難さは,一連の動きの流れをB氏の身体に合ったペースに調整することができない,であることが明らかになった。慢性呼吸不全B氏の事例から得られた看護への示唆には,慢性呼吸不全患者の馴染んだ対処の仕方を理解すること,今現在の病気と身体の状態のずれを認識できるように一緒に身体を看ていくこと,このずれを埋めていけるように患者の携えている関心や馴染んだ対処に働きかけていくこと,痛みの軌跡を再解釈することで,現状を正しく理解し今後の生活に見通しを持ってどのように生活するのかを考えていけるように援助することであった。