NICUにおいて母親が経験したケアの実際 : Family centered care (FCC)に焦点をあてて
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概要
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本研究の目的は,NICUにおける母親へのケアの実態について,FCCの概念を用いて調査し,Donabedianによるケアの質評価の方法に基づきケアが及ぼす母親への成果を探索することである。本研究は,倫理の原則に基づき行われ,過程変数の測定道具には,研究者が作成した「NICUにおけるFCC質問紙」を用いた。成果変数には,患者信頼尺度,自尊感情尺度,ケア満足度を用いた。208部配布し,ケア過程の実態を調査し,ケア結果との関係を分析した結果,FCCの視点からみたNICUでの母親に対するケアは,「子どもからのメッセージを共有する」「子どもを護りたい気持ちに応える」「母親と子どもとの間の障壁を低くする」「母親を歓迎する」「母親へのいたわり」の5つの要素で構成されていた。これらFCCの考えを反映した構成要素の合計得点の平均は,59.9(SD=10.0)点であり,「かなりそう思う」とする回答が多かった。この合計得点は,ケア満足度および母親の看護師に対する信頼を示す得点と有意な正の相関関係が認められた。5つの構成要素に含まれる,「子どもからのメッセージを共有する」「子どもを護りたい気持ちに応える」「母親へのいたわり」の3要素は,ケアの満足度と母親の看護師に対する信頼を示す得点に影響を及ぼしていることが認められた。一方,子どものNICU退院後3ヶ月の時点において,母親の自尊感情得点とケア要素の間に,関係性は認められなかった。本研究で示されたケアの実態と成果から,看護師はケアパートナーとしての母親を支えるだけでなく,よりエンパワーしていくことを共通理解し,子どもへのケア場面でどのように生かしていくのかについて医療スタッフ間で検討を続ける必要があると考えられた。
- 聖路加看護大学の論文