糖尿病性神経障害におけるシュワン細胞機能異常に関する研究
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概要
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糖尿病性神経障害の発症進展機序解明の一端として、末梢神経機能維持に重要な役割を果たすシュワン細胞に着目し、ポリオール代謝経路亢進および終末糖化産物(AGEs)の細胞機能に対する影響を検討した。ラット末梢神経から単離培養したシュワン細胞において高濃度グルコース下でのポリオール代謝経路の亢進が確認され、その亢進に伴い、ニューロトロフィン-3(NT-3)誘導性の神経成長因子(NGF)産生能が低下することが明らかになった。また、その低下にはポリオール代謝経路亢進に依存した酸化ストレスの増大の関与が示唆された。つぎに、グリセルアルデヒドおよびグリコールアルデヒドAGEsがアポトーシスおよび炎症性サイトカイン産生を誘導することを明らかにした。さらに、不死化マウスシュワン細胞IMS32を用い、高濃度グルコース下で網羅的遺伝子発現変化について検討した結果、ポリオール代謝経路亢進依存的に、毒性アルデヒドの解毒に関わるアルデヒド還元酵素遺伝子の発現が低下するものと考えられる。以上の成績から、糖尿病下の末梢神経では高血糖に起因したポリオール代謝経路の完遂とAGEsによるシュワン細胞障害が誘発され、糖尿病性神経障害が発症進展することが示唆された。
- 2008-06-30