堀野正雄とグラフ・モンタージュ : 再構築されるメディア的現実
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概要
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雑誌『犯罪科学』において,1930年代に登場した新しい「グラフ・モンタージュ」は,その実践者である堀野正雄,また写真評論家として活躍した伊奈信男や板垣鷹穂らによって,西欧で勃興した「新興芸術」の流れの中に位置づけられている。「グラフ・モンタージュ」と名付けられた一連の作品評を概観してみると,移入初期においては直裁的な翻訳のようであったが,その後試行錯誤を経て次第に独自の表現形式を獲得していったことが分かる。そこには社会の暗部や裏面をメディアの視覚を媒介にして安全かつ刺激的に覗き見たいという大衆の欲望が表象され,また,「シナリオ」を必要としたその構成と形式は,写真報道と映画を架橋する新しい表現であったにちがいない。