卵巣チョコレート嚢胞の取り扱い(<特集>子宮内膜症の癌化)

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卵巣類内膜腺癌や卵巣明細胞腺癌では子宮内膜症の合併頻度が20〜50%と高く,臨床病理学的観点から子宮内膜症と卵巣癌との関連が指摘されている.PTEN遺伝子が位置する10q23.3のヘテロ接合性の欠失(LOH)は,正常子宮内膜ではみられず,子宮内膜症組織の56%,卵巣類内膜腺癌の42%,明細胞腺癌の27%にみられる.マウスモデルを用いた実験では,卵巣表層上皮のK-ras遺伝子発現あるいはPTEN遺伝子の欠失により卵巣に類内膜腺様の病変を生じ,K-ras遺伝子発現とPTEN遺伝子の欠失を組み合わせることにより,卵巣類内膜腺癌が発生した.以上の成績から,子宮内膜症の悪性化におけるPTEN遺伝子の重要性が示唆される.しかしながら,子宮内膜症の悪性化に関する詳細なメカニズムはいまだ明らかでなく,子宮内膜症悪性化に関する分子生物学的知見の更なる集積が望まれる.卵巣チョコレート嚢胞の悪性化の観点から,卵巣チョコレート嚢胞を取り扱う際の留意事項として,悪性所見の有無,年齢,腫瘍径および血清CA125濃度などが挙げられる.悪性化の観点を考慮すると40歳以上の卵巣チョコレート嚢胞は経過観察ではなく,原則として付属器摘出とすることが望ましい.また,40歳未満の症例においても,大きな腫瘤(腫瘍径7cm以上)を形成する場合には嚢胞摘出が必要となる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
2007-04-01

卵巣チョコレート嚢胞の取り扱い(<特集>子宮内膜症の癌化)

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